お勧めの一冊

牛が拓く牧場
斎藤 晶 地湧社
 戦後の開拓団として旭川に入植した著者に割り当てられたのは、雑木と熊笹に覆われた荒れ山だった。畑を作ることなど当然無理。著者が選んだのは「牛とともに山の自然に溶け込む」ことだった。それから50年。著者達を受け入れた山は、自ら美しい牧場へと姿を変えていった。今、そこには「自然の中で暮らすゆとり」と「経済的豊かさ」が両立した、新しいライフスタイルが展開されている。
 本書は、著者が自らの半生を淡々と振り返ったノンフィクションである。同時に、著者の思惑を超えて、「自然と共生する社会」の本質に迫る哲学の書でもある。
地域からの挑戦  〜 鳥取県・智頭町の「くに」おこし 〜
岡田憲夫・杉万俊夫・平塚伸治・河原利和 岩波ブックレットNo.520
住民が、自らの住む集落を見つめ、将来のビジョンを描き、その実現に汗をかく。
来るべき住民自治の時代を見すえた、壮大な社会システムの構築が、山間の地、智頭で始まった。
国が「大きく変わる」のを座して待つのか。それとも、風景を共有できる身近な空間(=くに)を、わが手で「小さく変えていくのか」。
 
※「くに」おこし活動のひとつ、清流を守る取り組みを、本書の著者が「Web環境塾」で連載の予定。
地球環境報告T・U
石 弘之 岩波新書 33/592
 砂漠化や森林の喪失などの自然破壊から、公害や都市問題にいたるまで、「環境問題」を幅広く取り上げる。本書の特徴は「社会的な要因」に重点を置いて分析を進めていることだ。飢饉の真っ直中で農産物の輸出が伸び続けるアフリカ諸国の事例など、環境問題の意外な一面、隠された本質に鋭く切り込む。
 現代社会への厳しい問題提起だ。
中国で環境問題にとりくむ
定方 正毅 岩波新書 690
 工場排煙の脱硫と沙漠の土壌改良。一見、何の繋がりもないふたつの取り組みがひとつになった。脱硫プロセスの廃棄物である脱硫石膏を、中国東北地方を中心に深刻化するアルカリ土壌の改良に活用する試みである。途上国の環境破壊を防ぐ「トンネルルート」の、具体的かつ有効な施策のあり方を示すものだといえる。
 プロジェクトに関わる中国の人々とのやりとりを描く暖かな文章が、相互の信頼に基づいた「良い交流」を感じさせる。